言われてみれば… 船の窓が丸い理由
建物の窓はほとんどが四角ですが、船では丸い窓がよく使われます。実は、これには科学的な理由があるんです。
波によるねじれやゆがみ
船体に穴を開けた場合、波によるねじれやゆがみの力は、穴の滑らかでない箇所(四角形の窓など)に集中してしまい、そこから裂け目が生じやすくなります。このことから、波の影響を受けてたわむ場所や、窓が壊れた場合に海水が入る可能性がある甲板下の船窓には円形の窓が使われます。
船舶構造規則
船舶構造規則では、船舶の窓を開口面積や設置場所などで「窓」「船窓」「天窓」の3種類に分けています。また、長方形の窓は角に十分な丸みをつけることや、上甲板より下の外板に取り付ける船窓は波浪による荷重に対し十分な強度を持つ丸窓とすることなどが定められています。
「鯨が入る」
船に空調設備がない時代、帆船では船窓を開けたまま寝ていると、風を受ける方向を変えたときに船の傾きが逆になり、海水が船室に入ってずぶ濡れになることがありました。このことを「鯨が入る」や「鯨が飛び込む」などと言いました。
なんのためにある?「バルバスバウ」
船の船首部には、下記の画像のようにコブのようなものが着いていることが多く、これを「バルバスバウ」といいます。これは一体何のためについているのでしょうか。
船の抵抗
船が進むときに、自ら受ける抵抗は、水面に波を作ることによる造波抵抗と、水の粘性による摩擦抵抗や造渦抵抗に大別できます。
- 造波抵抗は、波を起こすエネルギーが船の走行に影響を及ぼすもので、抵抗の大きさは船体の形状で決まります。
- 摩擦抵抗は船体と水が擦れることで発生する抵抗で、水中の船体の表面積に比例して大きくなります。
- 造渦抵抗は、船体表面から離れた水が後方で渦を作り、圧力が抵抗して後ろ向きに引っ張る力が発生することによるものです。
バルバスバウの役割
船のスピードは造渦抵抗をへらすことで上げられます。水線長に対して幅の狭い船にすれば抵抗が減りますが、積載能力が落ちてしまいます。そこで同じ船長で水線長を長くするのと同じ効果を狙って船主水面下に球場の突起を付けたのが、バルバスバウです。突起が作る波と船主が作った波同士が干渉して船首の波を消す効果もあります。
珍しいバウ
世界のクルーズ船には珍しい形の船首を持つものもあります。セレブリティクルーズの〈セレブリティ・エイペックス〉は「パラボリック・ウルトラバウ」と称する革新的な設計の船首のおかげで,摩擦抵抗と動揺を低減し,高レベルの快適さと燃料効率の良さを実現しています。
なぜまっすぐ行かない?大圏航法を解説
アメリカ西海岸のサンフランシスコは東京と同じくらいの緯度ですが、東京からサンフランシスコに向けて航海するときは、真東に向かわず、アリューシャン列島の近くを通っていきます。どうしてでしょう?
大圏航路
地球上の2地点間の最短距離は、地球儀とヒモがあれば分かります。丸い地球儀上で東京とサンフランシスコを通るようにヒモをピンと張れば、それが最短航路であり、2地点を通る大圏(地球における大円のこと)の一部です。
海図は経度線が平行に引かれた漸長線(メルカトル図法)で描かれているため、海図上でこの大圏航路をたどると、北の方へ弓上に遠回りをしているように見えますが、実際は最短航路となります。緯度線に沿って真東に行くと、かえって遠回りになってしまいます。
日本から北米に向かう大圏航路はアリューシャン諸島の付近を通ることになるのですが、この海域は荒天が続くことが多く、航行の難所として知られています。そこで、実際の航海では、大圏航路を踏まえつつ、天候の動向や積荷の状況、燃料消費量などを考えて、最適な航路を選定しています。
弾道ミサイルの飛行コースにも
軍事上の観点からは、大圏コースは弾道ミサイルの飛行コースとして認識されています。旧ソ連、中国、北朝鮮からアメリカ合衆国本土を狙うミサイルは、大圏コースとして北極圏上空を飛行するため、アラスカやグリーンランドのレーダー基地で探知することになります。
旧約聖書で予言されていた?!現代のタンカーにも採用される奇跡の比率
皆さんは、「ノアの方舟」をご存知でしょうか?名前だけなら知っている、という方も多いと思いますが、ノアの方舟の大きさまで知っている人は少ないでしょう。実は、この船の大きさは旧約聖書の中で神のお告げで決められており、なんと現代の船舶工学でも採用されている比率なんです!
ノアの方舟とは
旧約聖書の「創世記」に登場するノアの方舟は、大洪水を起こしてこの世を一層しようと考えた神が、信仰心の強いノアとその家族を助けようとして作らせた船です。
方舟はゴフェルの木という神木でつくられ、三階建てで内部に小部屋が多く設けられていました。ノアは方舟を完成させると、妻と、三人の息子とそれぞれの妻、そしてすべての動物のつがいを方舟に乗せ洪水を免れました。ちなみに、地上に残されたすべての生き物は洪水で死んだとのことです。かわいそう・・・。
ノアの方舟の大きさ
ノア(当時600歳!)は、神から、長さ300キュビト、幅50キュビト、高さ30キュビトの船の作成を告げられました。この「キュビト」という単位は、古代メソポタミアで生まれ、西洋の各地で実際に使われてきた長さの単位です。中指の先から肘までの長さを示す身体尺で、1キュビトは約45cmだったと言われています。
奇跡の比率
上記のキュビトの単位をメートルに換算すると、方舟は長さ135m、幅22.5m、高さ13.5mほどとなりますが、この「長さ:幅:高さ」の比率は、現代のタンカーなどに採用されるものと同じになります!
古代の神のお告げが、現代の船舶工学を駆使した近代船舶と一致するという、半分都市伝説的な事実にロマンを感じずにはいられません。
ノアの方舟について、もっと詳しく知りたい方は以下の映画がおすすめです!
あれは日本丸?海王丸? 違いが分かる人になりましょう!
昨日2月15日に、練習帆船〈日本丸〉と〈海王丸〉が神戸港・中突堤に同時寄港しました。この二隻が同時寄港するのはなかなか珍しく、多くの船好きが写真を取りに神戸港に出向いたのではないでしょうか。
ちなみに、神戸市が日本海技教育機構に両帆船の停泊を提案したとのことです。素晴らしいですね!
ところで、〈日本丸〉と〈海王丸〉の外見は瓜二つで、遠目で見ただけではなかなか区別がつきませんが、船体に書いてある名前以外に両帆船を区別する方法って知っていますか?
1 ラインの本数
船体の青いラインの本数が異なります。
↑日本丸には青いラインが1本
↑海王丸には2本入っています
(海王丸の船名だけ手書きみたいな書体ですね。どうしてだろう・・・。)
2 フィギュアヘッドが異なる
フィギュアヘッドと呼ばれる船の船首に取り付けられた動物や人物などの像のポーズが異なります。
↑〈日本丸〉の船首像は“藍青(らんじょう)”と言い女神が合掌しています。
↑〈海王丸〉の船首像は“紺青(こんじょう)”と言い女神が笛を奏でています。
3 救命艇の色が違う
これが一番わかり易い違いなのです。
↑〈日本丸〉の救命艇は全体がオレンジ色です。
↑〈海王丸〉の救命艇は船体が白色です。
この3つをしっかり覚えておけばバッチリです!
以下に表でまとめておきました。
知っていますか?上屋(うわや)の語源
上屋は、船から荷揚げした貨物や船に積み込み貨物の荷捌きや中継作業のため、これらを一時的に保管するための建物です。通常、岸壁や物揚げ場などの係留施設の近くで、エプロンと呼ばれる荷役のための車両の走行スペースの後方に設置されます。
横浜や函館などの赤レンガ倉庫ももともとは上屋として使われていました。
では、上屋の語源はなんでしょうか?
上屋の語源は英語
上屋の呼称の語源は、倉庫や商品保管庫を意味する英語のWarehouse(ウェアハウス)で、これが転訛したものです。American(アメリカン)がメリケンになったらい、Lemonade(レモネード)がラムネになったのと同じですね。
ちなみに、構造的には倉庫に酷似していますが、荷さばきや一時保管を本来の目的としていて、長期保管を本来の目的とする倉庫とは機能的にも異なり区別されます。法制上も倉庫業法ではなく港湾運送事業法で取り扱われ、関税法上では上屋は必ずしも建物を意味しません。